脱毛症とはどういう病気?
脱毛症とは、「頭髪または体毛が減ってしまった状態」のことです。
人の髪や体毛は通常、毛周期と呼ばれる一定のサイクルを保ち、「毛が伸びる」「毛が抜ける」「毛が生える」を繰り返しています。
朝起きた時、枕に抜け毛が多くついていることを不安に思い、受診される患者さんもいらっしゃいますが、1日に50本から100本位の抜け毛は生理的脱毛と呼ばれる正常範囲の生え変わりと言われています。
一方、毛周期のサイクルが崩れ、何らかの原因で正常範囲を超えた脱毛があり、毛が減ってしまった状態のことを脱毛症といいます。
また、少数ではありますが、先天的に毛が生えない問題を抱えている人もいます。
脱毛症の症状とは?
共通していることは髪の毛が抜ける点ですが、脱毛が起きる原因や毛髪を作る毛包という皮膚に埋もれた毛髪の根元の部分がどの程度壊されるのかなどをもとに幾つかに分類されており、脱毛症の種類によって脱毛の仕方も異なりますので、脱毛症だけをみて病気とは言えないのです。
脱毛症にはたくさんの種類があり、原因も症状も個々人により様々なため、受診時には視診や触診をはじめとしたあらゆる検査を行います。
視診の際に触診で頭皮、毛穴の状態を確認し、抜毛テストでは、毛髪の抜けやすさや毛周期ごとの毛包(毛髪の根元の部分)の状態がわかります。
脱毛症の症状を診断するにあたり、抜けた毛髪を詳しく観察することもとても重要です。
正常な人の自然に抜けてくる髪の毛根はボウルのような丸い形をしていますが、炎症がひどく毛根が壊れている円形脱毛症の方や、化学療法を受けたことによる毛根が傷ついてしまっている方の毛根は、先細りにとがってしまっています。
また、内分泌異常や膠原病など内科的な病気に関連して脱毛症を発症する場合や、梅毒などの感染症の症状の一つであったり、毛髪を作るのに重要な亜鉛や鉄などのミネラルが欠乏したために脱毛症になることもあるのです。
このような病気に関連して脱毛症になった場合、元となる病気が改善しないと脱毛症も改善することは難しいのです。
そのため、脱毛症の原因が何らかの病気が関連しているかを調べるために血液検査をする場合もあります。
脱毛症の治療法
推奨される治療法には以下の2つがあります。
- ステロイド局所注射
炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを、脱毛斑に注射で注入する治療法です。
症状が改善しない単発型、および多発型の成人患者に対して使われることがあります。高い水準の発毛効果がある反面、ステロイドの副作用を考慮し、子どもに対しては行いません。
また、注射時に強い痛みを伴うことと、副作用として注射部位が陥没する場合があります。 - 局所免疫療法
人工的にかぶれを起こす化学試薬、スクアレン酸ジブチルエステル(SADBE)か、ジフェニルシクロプロペノン(DPCP)を使って、かぶれを起こさせることにより発毛を促す治療方法です。
最初は1%ないし2%の高濃度なものをつけて感作させ、2週間後に低濃度なものを塗布、その後至適濃度まで徐々に濃度をあげて治療します。
本治療法は、比較的広範囲に脱毛している患者に対して行われます。
子どもにも使用できます。
約9割もの人に発毛効果があると言われていますが、かぶれやじんま疹、リンパ節腫脹などの副作用を生じることがあり、加えてアトピー性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹がある人は、一時的に症状が悪化する事があるので注意が必要です。
また、治療期間は半年から1年以上で、腰を据えてじっくりと取り組む必要があります。
有効性があるとされている治療法ですが、日本では保険適応の認可が降りていないため、自費診療となります。